私の感想と記録

つよくやさしく

梅佳代『白い犬』

 

弟が拾ってきた一匹の犬。デビュー作から10年、待望の写真集。はじめのころは木の枝で撫でとったけど、最後のほうは友達やったと思う。18 歳の夏、帰省した家に白い犬がいた。野山の探索、大好きな妹のはるか、ばあちゃんの死。能登の山深い自然の中で、移りゆく季節と梅家の暮らしに寄り添い生きる犬を追った17 年の記録。日常に潜む一瞬の輝きにシャッターを切り続ける梅佳代の真骨頂。(amazonの説明欄より引用)

 

これはほんとに梅佳代さんの作品の中でも本当に超好きな作品。

 

写真を見ると、犬のリョウが梅家によく馴染んでいて、きちんと家族の一員だったことが分かる。

滑稽で愛らしくて優しいリョウの姿は、写真集のページをめくるごとにどんどん人間みたいに確固とした人格(犬だから犬格?)を持った存在に見えてくる。

ほかの犬とは違う、「リョウ」という存在。

 

私も犬を飼っていて写真を撮るけど、こんなに多様な表情を撮るのってほんと簡単にできるもんじゃない。

梅佳代さんはすごいなあ。

 

収録されてる写真の中には、リョウが吐いてる写真とか真正面からフラッシュばっちりたいてる写真とかがあって、そこにやっぱり写真家特有の冷たさみたいなものをちょっと感じた。

だから悪いとかそういうことじゃないけど、梅佳代さんに限らず写真っていうのはいつもそういう冷酷さをはらんでるものだ。

 

 

あと、この作品の中で一番心に残ってるのは巻末の短い文章。

梅佳代さんの写真集にはいつも巻末に短文が載せられていて、そのなげやりなほどの率直なものいいと言語センスが前から大好きだった。

 

この作品は特にその梅佳代さんの言語センスの素敵さがはっきり分かる一冊。

 

「そしてリョウが終わった」

 

この一文には本当に胸を打たれた。

こんなにシンプルなことばなのに、ここまで喪失感を感じさせるその力よ...って感じ。

 

犬を飼ってる身として、いつか直面するその「終わり」をリョウに重ねて思わず泣きそうになってしまった。

 

 

リョウという犬が過ごした日々を、しっかりと見せてもらえる。