私の感想と記録

つよくやさしく

佐藤健寿『THE ISLAND 軍艦島』

 

 

この町には耳をふさぎたくなるほどの静けさがある。廃墟の王、軍艦島へ。(amazonの説明欄より引用) 

 

著者の佐藤健寿さんのことは「クレイジージャーニー」という番組で知った。

この番組、面白い人が面白いことしてて大好き!

佐藤健寿さんは世界中の不可思議な建築物などを訪ねて写真を撮る写真家。

奇界遺産』が有名な作品かなあ。

 

佐藤さんの興味の対象となる建築物や彼の写真ももちろん、佐藤さん自体のいつも飄々としている雰囲気が好き。

 

佐藤さんの著書では、他に『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』も持ってる。

こっちも面白いので機会があれば記事にしようと思う。

 

 

軍艦島を撮った写真集を出すということで、『THE ISLAND 軍艦島』は発売前から楽しみにしてた。

 

まず、この作品は軍艦島内に書き残されていた作者不明の詩と共に進行していくんだけど、言葉の間の取り方と写真のセレクトが素晴らしい。

 

特にこの写真集のキャッチコピーにもなっている、

「この町には耳をふさぎたくなるほどの静けさがある」

という言葉。

詩の中でもここはキメの部分というか、ひときわグッと引き込まれる部分だと感じるところなんだけど、この一文と共に載っている写真もすごく引力のあるもの。

他の写真と比べて格段に美しさと静けさを感じさせる写真。

このページでは思わず手が止まった…。

 

個人的にはこの部分が一番印象的だけど、全体を通して、詩のテンションに合うように写真の並びが丁寧に考えられているように感じた。

そのおかげか、詩の内容と写真とが自然にするすると入ってくる。

読んでる時の感覚としては、軍艦島を実際に探索しながら、天から詩を語りかけられているような感じかなあ。

 

あとは、ページのベースの色が半分くらいのところで黒から白に変わるところも印象的。

著者は読者に、まったくの非日常で異質な世界だった軍艦島という島を、写真集を読み進めるうちに、自分の生活や自分が住む街と軍艦島とを重ねた身近な世界として新たに捉えていく、という心の動きを期待していて、それを色の変化で表現している、のかな…?

「未知→既知」を「黒→白」で表している、のかな…?

この演出の意図を一生懸命考えて、なんとなくこんな感じかしらと思った。笑

 

この作品を読んで、私自身すごく軍艦島に対してのイメージが変わった。というか全然なんにも知らなかったことに気づいた。

軍艦島という響きもあって、もっと殺伐とした空間だと思っていたけど、住んでいた人の生活がいまだに残っているタイムカプセルのような島だと今は思う。

 

これを見てから実際私も軍艦島に足を運んだんだけど、この写真集がいい予習になったなって感じた。

またの機会に軍艦島を見ての私の感想もあげたいと思う。 

 

『THE ISLAND 軍艦島』、オススメ。